旦那様は高校教師
「南条さんは心矢さんの教え子なんだって?可哀想。好きになっても相手が先生じゃ振り向いてもらえないわね」
雪子さんは長い髪をバサッと後ろへ流す。
そして、凄~く嫌味な言い方で話を続ける。
「私ねぇ、心矢さんと付き合ってるの♪プロポーズもされたのよ♪」
プ…プロポーズ!?
其れは絶対に無いでしょ!?
だって、心ちゃんは私と結婚してるんだもん。
けど其の事は口が裂けても言えない。
「ほら、此れ見てぇ。指輪も買って貰ったのよぉ♪」
雪子さんは得意げに左手を見せる。
マリッジリングに似たシンプルなリングだけど、私と心ちゃんのモノとはデザインも色も異なる。
きっと今まで、此の手で心ちゃんを好きな女性を遠ざけて来たんだね。
ごめんなさい、雪子さん。
私にはそんな手、通用しないです。
「雪子さん?先生の奥さんに会った事ってありますか?」
心ちゃんが結婚している事をバラすのはどうかと思ったけど、私は黙って聞く事が出来なかった。