旦那様は高校教師


「有り難う。でもアパートまで来るのはどうかと思うけど?」



「すみません…。迷惑なのは分かってます。でも、どうしても先生の奥さんに会って見たかったんです…」



市川は下を向き涙を流す。



会いたかったって…何故?



もし仮に会えたとしたら、其の後どうするつもりなんだ?



「緑は、先生が結婚しても諦め切れなかったんです。奥さんに会えば諦められるかもと思って、私が連れて来たんです」



堤は市川の背中をそっと撫でる。



参ったなぁ。



そんな事言われても困るよ。



奥さんに会ったら、其れこそ大騒ぎになる。



「今すぐ奥さんに会わせる事は出来ないけど、いつか必ず皆に紹介する。だからもう此処へは来ないように」



「はい…。すみませんでした…」



2人は俯き加減に歩き出し、トボトボ帰って行った。



「ただいま」



「心ちゃん!!」



階段を上がると、キッチンから飛び出して来たほたるが、俺の体にしがみつく。





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