旦那様は高校教師


「南条?また二十面相になってる…。今度は何を考えてるの?」



私の全てを吸い込む様な先生の目が私へ向く。



ズルい…其の目には逆らえない。



観念した私は思い切って尋ねた。



「あの…生徒として…ス…キ…って事ですか?」



意識し過ぎて、好きの言葉がサラリと言えない。



「…俺は生徒としてじゃなく1人の女性として、お前の事が好きだよ…」



私を見つめる先生の目は真剣そのもの。



だから其の言葉に嘘はないと思った。



「もしかしたら…南条が俺の事を好きだって言ってくれるのを、待っていたのかもしれないなぁ…」



先生は空を仰ぎ、呟くように口を開く。



「教師と生徒って立場から考えると、俺から好きだって言えないからな…。凄く嬉しかったよ」



先生は私の手をそっと取り、照れた顔を見せる。



普段、学校では見る事がない其の顔に私もつられた。



私は先生が好きで、先生も私が好き…。



其れは俗に言う恋人同士って事?



それが成立した時点で、お付き合いしている事になるの?



先生は黙ったままだし、分かんないよぉ。



こんな事になるなら、祐奈と詩織にもっと詳しく聞いておけば良かったなぁ。





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