同居ゲーム
その時、遠慮がちにノックする音がした。



振り返ると、央が壁に隠れるように立っていた。



「あ、あの〜。」


「どうしたの?」



柔らかい声で海斗は優しく尋ねた。



「俺、大丈夫だから。
もう、あとは自分でなんとかするから。」



それだけ言うと、央は引っ込んだ。



驚いたあたし達は、何も言わず、固まったまま。



その間に央は行ってしまった。



「………よかったね。」



ポンッと海斗の手があたしの肩にのる。



あたしは無言で頷いた。



「さっ、寝よ。」



パンッと手を打つ音が明るく響いた。



「ほら、行くよ。」



引っ張られるように、立ち上がる。



「美喜さんも岩谷さんも、ほら。」


「あ、え?」



美喜さんは目を瞬いた。



「美喜。」



深みのある低音の声が美喜さんを呼ぶ。



それにつられるように、美喜さんも立ち上がった。



あたし達がリビングを出ると、海斗が手を伸ばして電気を消した。



廊下が一気に暗くなる。



と、その時あたしの手が包まれた。



「しっ。」



先を読んだのか、海斗が耳元で囁く。



ギュッと優しく握られ、あたしは少し赤くなった。



暗闇とはいえ、近くに人がいることが気になる。




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