同居ゲーム
ーーーーー……。
あたしはお茶を入れながら、そーっとリビングを覗いた。
海斗はソファーに仏頂面で座り、お父さんらしい人は立ったまま海斗を見下ろしている。
こっちに背を向けて立っているので、表情は窺えない。
でも、肩を怒らせているので、怒っているのは明白だ。
カチャンという、湯飲み(ご丁寧に、このマンションに越してきたときにはお茶のセットが用意されていた。)の音が響くくらい、静まり返っている。
「…失礼します。」
あたしはお盆にのせた湯飲みをテーブルに置いた。
「どうぞ、お掛け下さい。」
おずおずとソファーを手で示すが、黙殺された。
あたしは逃げるようにキッチンに戻った。
「彼女に当たらないで下さいよ。」
敬語なのに冷たい響きをもつ海斗の声が沈黙を破った。
内心、ひーっと悲鳴を上げる。
夏休みの海斗、カムバック!?
やめて〜。
あたしは急いでお盆を片付け、廊下に向かった。
「じゃあ、失礼します。
ごゆっくり〜。」
そーっとドアを閉め、聞き耳を立てていた美喜さん達に駆け寄る。
手で「駄目無理ヤバイ」と示すと、美喜さんは額を押さえた。
「海斗の声、ヤバかったもんねぇ。」
「なぁ。
怖いわ。」
最近もう元気を取り戻した央もしきりに頷く。