同居ゲーム
寒い。
寒くて震えが止まらない。
あたしはダウンの前を掻きあわせた。
「央〜、早く〜。」
カチカチと鳴る歯の間から言葉を押し出す。
廊下から央の叫び声が返ってきた。
「急かすんなら由宇希も手伝えよ!」
「やだよ〜、央がじゃんけんに負けたんじゃん。」
何の話をしているかというと…
「灯油入れるの結構骨が折れるんだかんな!」
ヒーターの灯油が切れたため、今汲みに行ってもらっているのだ。
「この寒い中、か弱い女の子を廊下に出すわけないよね、紳士な央くん。」
「畜生、こんな時だけそんな調子のいいこと言いやがって…。」
尻すぼみに央の声が小さくなっていく。
シュポシュポという灯油を汲む音だけが聞こえた。
「央、早く。」
「岩谷さんも何気に酷い。」
岩谷はちらりとあたしを見て、手に息を吐きかけた。