同居ゲーム
「やったな。」



耳元で海斗が囁く。



あたしは無言で何度も頷いた。



もう、ありがとうって何度言っても足りないくらい、感謝している。



結果的に勉強は必要なかったけど、一番協力してくれたのは海斗だ。



思う存分抱きついたあと、海斗は美喜さん達を見上げた。



「央は?」


「まだ、だね。」



まさかね、と美喜さんが笑う。



どうなんだ?



「取り敢えず、あたしコーヒー淹れてこよ。」


「俺達の分もお願い。」


「うん。」



もし駄目だった場合、みんながいつも通りの方がいいだろうし。



こんな気づかいが逆に苦しかったらどうしよう。



あたしは頭を振り、カップを出した。



央が帰ってくるのを待つしかないね。



カップにコーヒーを注ぐ。



ふわりといい匂いがキッチンに広がる。



海斗ご使用の豆を今も使っている。



香りのいいし、何より味が最高だ。



おぼんに乗せて運んでいくと、美喜さんが鼻をひくつかせた。



「ん~、いい匂い。」


「だよね。
あたしも淹れてていつも思う。」



はい、とあたしはカップを配った。



岩谷さんはうれしそうに口をつける。



最後にあたしは自分と海斗のぶんを持って海斗の隣に座った。



「あんがと。」



カップを受け取った海斗は静かに口をつけた。



あたしも飲もうとしたその時、央が帰ってきた。









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