同居ゲーム
オルゴールの音楽が流れるなか、あたし達卒業生は赤いカーペットの上を歩く。
練習で何度も歩いたけど、今日はやっぱり何か違う。
あたしは3年間使った体育館を見まわした。
屋根に挟まったバレーボール。
一番端のやつは、あたしと彩華と宏樹が遊んでて打ち上げたやつだ。
そして、ドアの彫れたキズ。
あれはあたしのクラスの体育の時間、カートを引きまわしていた体育係がつけたキズ。
こうやって見てみると、あたし達が在籍していたっていう証がたくさんある。
あたしは呆けた気分で自分の席についた。
式のことはほとんど覚えていない。
何も考えず、校長の話を聞き、歌を歌い、生徒会長のあいさつを聞いた。
退場の時も、勝手に身体が動いた。
あたし、おかしいな。
こういう場面に強いはずなのに、泣きそうだ。
絶対泣くまいと顔をあげた。
瞬間、涙が決壊した。
美喜さん、岩谷さん、そして海斗が通路側の保護者席に座っていた。
美喜さんはハンカチを目に当て、目を赤くしている。
岩谷さんはただ、口を引き結んで拍手している。
海斗は…。