瞼の人-マブタノヒト-
たくさん話したかったし、聞きたい事もたくさんあった。
なのに上手く話せなくて、時間だけが過ぎていった。
会話の間の静かな時間。
いつもは平気だしその時間がむしろ好きだったりもする私だけど、相手が高宮君てだけで不安になった。
何で私はこーなんだろう。
何で私はきっかけをこんなにも無駄にしてるんだろう。
焦れば焦るほどに頭は混乱して、言葉は少しも出て来なかった。
どのくらいそうしてただろう。
高宮君の友達が声かけて、高宮君が立ち上がって帰ろうとしてる。
私はただその姿を見てるだけ。
それなのに高宮君が帰り際に
「じゃあ、木田さん。また。」
て、あの笑顔を見せてくれたから、私は本気で泣きそうになった。