瞼の人-マブタノヒト-
なにも言葉を発しない俯いたまま私。
私の代わりに目の前のこの男は一人で話し始めた。
「そっか、そっか。
澪は修平の事が好きなんだな。」
いつもと同じ様子でどこか楽しそうに話す凌治。
何言ってるんだと内心思ってたけど口にはしなかった。
「大丈夫。焦って話さなくても澪には澪のペースがあるし、修平も無口で気の利かない奴だけどちゃんと解ってくれる。
今日話せなくてもまた明日があるし、まだまだ次があるって。」
不覚にも涙が溢れた。
我慢してバレないように俯くと、一粒アスファルトに濃いしみを作った。