瞼の人-マブタノヒト-
私と高宮君は変わらずメールは続いている。
毎日送るわけではないけど、一週間に一度は必ず。
最近はちゃんと「おやすみ。」まで続くようになった。
クラスも違うし、大会前で練習が大変そうな高宮君とあの日以来言葉を交わす事は無かった。
私から話しかけに行けば良いんだろうけど、臆病な私は行動に移そうとも思えなかった。
毎朝毎朝『おはよう。』の練習をしては言えずに一日が終わる。
頑張っての意味を込めて一生懸命選んで買った差し入れは、渡せず鞄の中で眠ったままだった。
「澪、教科書貸して。」
『…また??嫌。』
「冷てぇ奴だな。英語。早く。」
なんで私が。大体他に借りれは…ブツブツ。
『…はい!!汚さないでよね、凌治。』