瞼の人-マブタノヒト-
…この手はよく知ってた。
いつかの日の階段で泣いてる先輩を強引に引き寄せてた手。
いつかの日の帰り道、学年1可愛い子をしっかり繋いで引っ張ていた手。
いつかの日、私の親友の髪を、頬を。
愛しそうに優しく愛でた手…
その手の持ち主は、淋しいそうに震える私の首にほどいたマフラーを巻き直しながら、凄く楽しそうに笑ってた。
「凌治〜!!澪には手ぇ出すなよ。」
俺の友達だから〜〜と楽しそうに続けたタケの言葉が真っ白だった頭をクリアにした。