瞼の人-マブタノヒト-

噂にはオヒレ、ハヒレ、セヒレが着くもので…

お昼を過ぎた頃には‘私があの子から高宮君を寝盗った。’とか、‘私と高宮君が付き合っててあの子に寝盗られた。’とか…下世話なモノになってた。



もうほっとけよ。



今までおとなしく、目立たず生きてきた私。


誰を恨めばいいのかわからず、高宮君を好きになった自分を恨むしか無かった。



噂の渦中の私の隣にはしょんぼりなユーリ。


「澪…本当にごめん。私のせいだね…」


朝からずっとこの調子。


『違うってば!!気にしないでよ!!』



そうは言ってみても私達から出てくるのは溜息だけだった。


人の噂はなんとやら…もう少しで春休み。
それだけが救いだった。


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