瞼の人-マブタノヒト-

サドルをギュっと握る私。



過ぎていく風に声を乗せて


『ねぇー!!今日何やってたのー??』

「えー!!何―!!」


この距離で聞こえないはずないのにね。



「…今日どだったー?」


『えー??何がー??』


「がっこう!!」



いつもよりずっと声を張ってする会話。


すぐに風が攫ってくれる。


なにもかも風に委ねて、自分に都合の良いように…



『タケのアホーーー!!』



凌治の質問には答えず、もっと大きい声をあげた。


何だか楽しかった。


< 66 / 69 >

この作品をシェア

pagetop