フェザールスタの肖像
旅行に来てキレイな風景を見ても、美味しいお茶を頂いても心底楽しいなんて思えなかった。

私は無意識に逃げて来たんだ。
自分が混乱してる?
…違う、受け入れられないんだと思う、ユウとミュウを。

ハイトさんからワルツの特訓を受けていなければ、私はあの美しい部屋で泣き続けていたと思う。

あぁ、だからハイトさんは私にマスカレードに行かせる事を口実にワルツを教えてくれていたのかもしれないなぁ。

心配掛けたのかも……。
帰ったらお礼をいわなきゃ。




帰ったら?
……私、いつ帰れる?


大きく目を見開いた私をギュスターヴが覗き込んできた。

「お前、大丈夫か?」

パクパクと口を開いて、もし戻れなかったらどうなるのか想像つかない。


も、も、も、もしかしてこのまま、この時代に残るハメになったら、生きていけるの、私!?

早く帰る方法をみつけなきゃ……。


「おいっ!」

ギュスターヴが語気強く私をゆすぶった。

肩に置かれた手の大きさを感じて我に帰る。暖かい手。

「…大丈夫。」

ギュスターヴを見上げてつぶやいた。

こんな事、話しても信じる訳がないよ。

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