フェザールスタの肖像
「大公の娘アンジュ様と王子の見合い?みたいなもん。まぁ、婚儀は決まってるから見合いもクソもないけどな、バランタイン大公も何を考えているだか…。」

私を馬に乗せながらギュスターヴはぶつくさ言ってる。
バランタイン大公てっ…まさにフェザールスタのこの土地も現代の地図には大公国の一部として描かれているし、私が飛行機で降り立った国。

「偉い人だと思ったけど、王女様だったんだ。」
ギュスターヴの顔は話しながらも眉間にシワを寄せた嫌な顔。

「ばか、お偉く高貴な公女様だ。」

「……あんまりお見合いに賛成じゃなさそうだね。でも、その顔はマズいよ。」

フッと吹き出したギュスターヴは馬に跨り、メイドが差し出す弓矢を受け取りながら、

「じゃぁ、仮面を付けるとするか。」

はははと軽く笑いながら丸いクセッ毛を揺らしている。私のお腹に手を回して、
「大国から申し込まれた婚儀など見え透いた脅しだ。」
耳元でそうつぶやいた。

「私なら…、」
暗闇に松明で照らし出されたアルベール王子は、ライオンの仮面を片手に馬上であれこれ指図しているみたい。
アンジュ公女の白い馬も揺れる炎でボウッと浮き出ている。

「私なら?なんだ?」
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