フェザールスタの肖像
グッと夜咲鳥を抱きしめる。

何かを言い返したい。
でも、
言える程

今の私に強い何かは、無いよ。

独りでここにいて、居場所がない。

アルベール王子に見捨てられたら頼る所がないんだから。


王子に迷惑が係りそうな事はマズい。


「聞こえてるの?」ファンヌはクイッと眉をあげ、私の背後に視線を投げる。

「私は…侍女ではないと思うわ。王子の馬に乗ったのはタマタマよ。」

えっ?と顔をしかめ私を見るファンヌと視線が合うが逃げないで視線は外さない。
解らないけど、負けない。
わかんないけど、ね。
そらしたらダメな気がした。

ドッドドッ、と馬の気配。
「おい、城に戻るぞ!早く来い」
青ざめたギュスターヴが私に、手を差し出す。
私はファンヌとギュスターヴの顔を見比べる。

「ギュスターヴ…」大きな手に私は腕を伸ばして馬上に引き上げられる。

「ファンヌ様、また後ほど…」
馬上から話しかけるが、ファンヌは私ではなくギュスターヴにニッコリと

「アルベール様は大丈夫?では、ご機嫌よう。」

とスカートを軽く持ち上げ立ち去った。


私達はカンテラで照らされた道を早足で駆ける。
「何を話してた?ファンヌとは顔見知りか?」

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