フェザールスタの肖像
結局、タクシーに降ろされた門は裏門だった。
トボトボゴロゴロとガーデンを抜けて(芝生はすばらしく深い緑)
やっと、城の裏側から入れた。
表門は観光客用に開かれていて、もっと入りやすかったのね。

リムレット城は昔の貴族のリムレット氏のお城をホテルの改装した
シャトーホテルだった。…プチじゃないよ。

「貴方のお部屋はここよ。…スーツケースはここにあるわ。この部屋はね。昔リムレット氏が…」

黒い執事が私のスーツケースを運んでくれていた様で、入り口に置かれていた。
確かに老夫婦がいたけれど、執事はいるし。
貴族の家に、小娘がお邪魔します状態。

「貴方は、一人旅でずっとこのホテルに滞在ね。観光したいところはあるの??」

宿主のレルラー夫人に聞かれた。恰幅の良いおばさま。
白髪の豊かな髪をサイドに流した品の良い方で、安心感がもてた。

部屋はブルーな壁紙に白い調度品、城主のリムレット氏が
愛する女性の為に設えたお部屋。
残念ながらその女性が、ここで過ごす時間はなかったけれど
ホテルの中でもご夫人向けとして人気のある部屋だって説明してくれたレルラーさん。

高い部屋特有の、言葉の反響が美しいドーム型の天井。
悲しい恋の余韻を感じながら、レルラーさんにありがとうと答えた。

「あ、私、ここに行きたいんです。」
飛行機でオジサマにもらった、パンフレットを見せた。
とりあえずで飛び込んだ飛行機で偶然親切にしてもらった。
どこを観光するかなんて決めてなかったから、まずは悲劇の王子様の顔でも見に行こうかな。


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