スキ☆キス
キューピッド
「さぁ、これを奴に渡すんだ!」
朝の教室に、そんな声が響く。
きっと、本人は小声のつもりなんだろうけど…
私は聞こえていないフリをして、携帯をカチカチといじり始めた。
「え、なにどしたのこれ?」
「何でもいいからお前は俺の言う通りにすればいい!」
「えー?意味わかんないよイッチー」
さっきから会話、丸聞こえ。
クラスのみんなは、さっきからそんなやりとりをしている一琉と達海を不思議そうに見ていた。
「お前が渡さないなら俺が渡すぞ!いいのか!!」
「ますます意味わかんないし、何それ脅しのつもり?」
「…っ……いいから早く行け!」
「はいはい、わかったよー」
―キュッ キュッ
上靴と床の擦れる足音が、こっちに近づいてくる。
それは私の前で止まって
ゆっくりと顔を上げると、そこには笑った達海が立っていた。
「エリー」
達海が私の名前を呼ぶ