スキ☆キス
 


「ほんとはバラの花束とかならよかったんだけど…」



そう言いながら

一輪の花を差し出す



「イッチー、自分家の庭から摘んできたみたい」



包装も何もしていない、真っ赤なチューリップ



「でも、今の俺にぴったりかも…エリー、赤いチューリップの花言葉って、知ってる?」



私が何も言わないでいると、達海はニコッと笑った。



「あい「ーっくしっ!!」



……………

少しの、沈黙。



「…………え?」



先に口を開いたのは、達海だった。

私は鼻をすすりながら答える。



「あ、ごめん…ズズッ
わだし花粉症なんだよね゙」



中学の頃くらいから、なぜか花全般がダメで

花粉が舞う季節になると、マスクとティッシュは必需品



「タツミンださいよぅー」

「んなっ!俺ぇ!?」



ぎゃあぎゃあとクミタンと達海が兄弟喧嘩を始める

私はその間もひたすらに鼻をかみ続けていた。



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