プリンセスゲーム
飯田さんの腕を握りしめ、私達は見つめあっていた。

震える膝は今にも崩れ落ちそうで、頼りない。

「私から目を離さないで…そう。
そのまま私を見てて下さい」

「だけど…
コワイ…かも」

「怖がらずに、力を抜いて」

「こ、こんな感じ?
って、ダメ!
これ以上は…
っあ…」

瞬間的にきつく閉じた瞳をおそるおそると開けば、何でもないと言うような甘い笑みを浮かべた飯田さんが私だけを見つめていた。

「怯える必要はありません。
それに、足を踏まれて怒るような輩は紳士ではありません。
騒ぐ輩なら何度でも踏んでさしあげなさい」

「それもどうかと…」

かっこいい私の執事とちょっと恥ずかしくなっちゃう会話をしつつも、全身の筋肉が緊張しているのは生まれて初めて履くピンヒールのパンプスでレッスン初日のたどたどしいワルツを踊って居るから。
オマケにレッスン三十分ですでにこの凶器で五回ほど飯田さんは犠牲になっている。
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