プリンセスゲーム
鹿野家の本宅にいらした椛様は、いくら自室とは言え裸足で歩き回られていた。

何気なく靴をお召しになるようにと、わたくしが履く靴の踵を鳴らしてみせるも、思い出したように履く程度。

朝食時のナイフとフォークの使い方はまあまあの合格点だが、橘家での挨拶ははらはらさせられっぱなしだった。

いくら橘家が鹿野家と格が違うとはい言え、廊下の絵画一枚一枚足を止めて説明を求めたのには冷や汗がでた。

説明を求めた相手と言うのが、あの橘の主だったからなおさらだ。

橘の主は終始和やかにお相手頂けたからほっとして帰ってくる事が出来たが、ご両親どころか後ろ盾を何も持たない椛様に鹿野の名前を持たせるのに橘以上の強力なカードはないと
大旦那様は賭けに出られたのだ。

結果はフランスの古城の修復プロジェクトで社交界デビューという、お嬢様の大勝利になった。

さらに言えば、めったに紹介しないという御子息の凪様まで御紹介頂き、わたくしも初めてお会い出来、いかに椛様をお気に入り頂けたか、お嬢様付きの執事として鼻が高い気分になった。
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