プリンセスゲーム
大きな業務用のエアコンの吹き出し口の前に立たされ、熱いコーヒーを淹れてくれた。
冷え切った手には火傷しそうなくらい熱かったけど、乾いた喉はものすごく水分を欲していた。

「着替え無いけど、お風呂今入れてるから」

「ありがとう凪君」

何処からか持ってきてくれた椅子に座ってやっと安心ができた。
真っ暗な森の中に独り迷子になって、飲まず食わずの数時間。
凍えて寂しくって、迷惑かけちゃったかなと反省しながら漸く人の居る世界に戻って来たらお隣さんだったなんて誰も想像しないだろう。
ちょっとした大冒険に思い出し笑いしてる間に

「お風呂入れるよ。あと、俺の服だけど良かったら使って」

シャツとかパーカーとかジーンズを渡してくれた。
よくよく自分の姿を見れば足元は泥まるけだし、腕や腰回りも草の汁で青臭かった。
悩むまでもなく有り難く借りる事にする。

「うん。借りるね」

暖かい部屋なのに震えの止まらない体を動かして、案内されたお風呂にゆっくり温まるように言われた。
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