プリンセスゲーム
「もしもし、椛ちゃん?」
「は、はい!こんばんは!」

緊張のあまり声が裏がえってしまった。

「こっちはおはよう、かな?
何かすごいフィアンセだね」

落ち着いた優しい声が心を落ち着かせてくれる。
さっきまでのどん底気分からどんどん浮上していく。
柔らかな羽に包まれる気分になる。

「お祖父様は断ってもいいって言ってくれたけど…」
「そうは言ってられない事情だよねぇ?」
「詳しい事情は知らないけど、何だか大変みたいです」

上條の言葉を信じれば大変な状況だが…

「所でフィアンセ君の名前聞いても良いかな?」

名前を言っていなかったらしい。

「上條って言います。上條郁。」
「上條…郁ねぇ」

暫く沈黙したあと

「凪に代わってくれる?」
「はぁ…凪君、代わってって」

交代すれば何かうんうんと相づちをうっているのに、何だか心配になってきた。
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