プリンセスゲーム
鬼門としか言いようの無い上條さんはただただ俯いて、少し目が赤くて・・・

「飯田、もう夜も遅い。椛さんを早く家までお連れしろ。
 そして弟」

幸人さんはひたりとナイフでも押し付けるような冷酷な声で

「綾乃さんのお嬢さんに何かしてみろ。椛さんが庇っても俺達が潰す。覚えておけ」

言って虫でも払うように追い出して、私を車の止まっているところまで二人で送ってくれた。
凪君や青山さん、天宮さんは呆然としたまま温室のおうちの前でさよならしたけど・・・

家に帰るまでの短い道程が酷く重い空気なのは私達のせいだけじゃないと何度も自分にいい聞かせる。
思いもよらぬ婚約が想像以上の事情が絡んでいて、簡単に断わる事もできなくなった婚約に重苦しい溜息をひとつだけ吐いた。
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