プリンセスゲーム
「橘から電話をもらった。迷子になったらしいな。なれるまではどこに行くのも飯田をつれてなさい。飯田、誰に何を言われようと椛から離れるな」
「畏まりまして」
「郁君も了承してもらえるかな?」
「はい・・・」
やっぱり元気のない声にさっきの事がまだ答えているのだろうと心配になる。
その証拠に
「ぶしつけな質問ですがうちの事をご存知でしたか?」
挫折を知らずに育ったというような彼はすっかり焦心しきったように問う質問にはさすがのおじい様もそこは溜息。
「橘に連絡を貰うまでわしも知らなかった。橘の情報は我が鹿野家の情報より正確だからな。確かだろう・・・」
久野さんもその話しを知ってるのか何処か表情も暗く、橘のおじ様からの情報はそれだけの打撃を与えていたようだ。
「申し訳ありませんが今日はすぐ家に戻り確認を取りたいと思いますので失礼させていただきます。本日の事は後日改めて参ります」
「そうしなさい。お家の一大事だ。お父さんにでも聞くのが一番正しいだろう」
「失礼します」
飯田さんがこうなるとわかっていてか、コートと鞄を持ち、一緒にお見送りと玄関へと向う。
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