プリンセスゲーム
その後姿を見送っていれば久野さんまで部屋から出て行ってしまっていた。
「椛・・・」
「ひゃい!」
変な返事をしてしまった。
だから慌てて姿勢を正し「はい」と背筋を伸ばす。
「昼間とは違う服を着ているな」
膝丈のフードつきのパーカーに、裾を何度も折り曲げたジーンズだ。おまけに靴まで男物の靴を借りていた。ちなみに私の真っ白ブーツは泥まみれの再起不能状態になっていた。
「酷く汚れていたので、貸して頂きました」
「そうか。森を越えて橘の家へと行ったそうだが?」
「凪君のお部屋・・・温室にたどり着きました。すみません。まさか庭で迷子になるとはさすがに考えてなかったです」
おじい様は溜息を零しながら頭を振り
「とにかく無事でよかった」
立ち上がり、私を包み込むように抱きしめた。
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