ROCKな人魚姫《後編》
夏休みを終え、葉っぱが色づき始めた10月。
11月の頭には文化祭もある。
文化祭では、野外に作られたステージで演奏できることもあって、それぞれのバンドはその演奏権を勝ち取ろうと必死になっていた。
あたしたちはというと。
あの初ライブの後、シノブがこのサークルに顔を出す事はなくなった。
授業で会ったら、挨拶はするし、話もする。
だけど、バンドについてはお互い一切触れない。
ユウもあのライブのことについては話さないし、シノブについても触れてこない。
バンドや音楽のことでシノブの話を出す事が、あたしたちの間でなんとなくタブーになっていた。
だからと言って、新しいギターを探そうという気にもなれない。
部室が使える時間を二人で過ごすことが多くなった。
あたしはバンドを壊したくなくて、
ユウのドラムを叩く場所を壊したくなくて、
自分の気持ちを殺すことにした。
だけど。
・・・ユウはきっと、自分のせいであたしからベース弾く場所を奪ってしまったと思っている。