『liar』
【プロローグ】
“シャーーーーー……”
薄暗く、少し“カビ”の匂いが鼻につく。
場末の安いホテル。
さっきまで、私の身体を隅々まで愛撫して、
「…ど…う……?
……っ良い…だろう…?」
私の為ではなく、自分の為の台詞を言い、湿った身体に必死な顔で、私の上に乗り動いていた男。
“ヒロシ”と言ったか?
趣味の悪い、赤や紫のライトを見つめながら、3時間前に出会った、年齢も職業も知らない男の事を考えてた。
部屋の中には、その男の浴びるシャワーの音だけが、響いている。