『liar』

ユキが一人加わった食卓は、居候の尚輝だけが浮かれている様で、いつもより良く喋っていた。

そのお陰で、ユキの緊張も溶け楽しい夕食の時間となったのだが。


眞司の部屋に戻った時には、ユキも笑顔になっていた。

「尚輝さんて、楽しい人ですね」

「顔もだろ?」


ユキと眞司は目を合わせて、前歯の欠けた尚輝の顔を思い出し、声をあげて笑っていた。


何年もの間忘れていた、あたたかい食卓だった。





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