『liar』

ある日、滅多に帰って来ない父親が、幸子と二人、真面目な顔で話をしている。


「ユキ、こっちに来て座りなさい」

幸子が、夫婦の間にユキを座らせる。


「お母さんはね、お父さんと別々に暮らす事にしたの。
ユキは、どうしたい?」


離婚の意味を、理解していた訳ではなかったが、幸子の言い方で、楽しい話をしていない事は理解出来た。


「お前の親父は最低だ」


幸子からの“暗示”の様に繰り返される言葉と、毎日帰って来る事のない父親の“義勝”には、元々、ユキは懐いていない。


それを知っている幸子は、それでもユキに決めさせようとしていた。





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