『liar』

学校から帰ると、知らないオジサンが部屋の中にいる。


「こんにちは」


髭を生やし、子供から見れば親しみやすさなど、まるでない男が言う。


「ユキ、ちゃんと、ご挨拶なさい」

いつもより、柔らかい口調で幸子が言う。


「……こんにちは…」

良く見ると、男の膝の上にはマキが座っている。


マキは、いつもそうだ。

ユキが出来ない事を、簡単にしてしまう。



二人で同時に“風邪”をひいた時も、注射が怖くて騒ぐユキの前で、

『先生、早く治りたいから注射して』

そう言って、

『マキちゃんは偉いね』


大人に嫌われない方法を、良く知っている。





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