『liar』
「ユキ、お前は“お父さん”て、呼ばないのか?」
突然切り出した勉の言葉に、ユキは固まってしまう。
左手に持った茶碗を落とし、その茶碗がぶつかって、味噌汁をこぼした。
「……ごめん…なさ……」
“バシッ”
ユキの声をかき消す様に、勉の大きな手が、ユキの頬を打つ………
ユキは、唇を強くかんで、勉を睨みつけた。
「なんだっ、その目は?
食べ物を粗末にするから悪いんだっ。
マキを見てみろ、ちゃんと食べてるだろっ」
ユキは、涙が溢れるのを“グッ”と堪え、部屋を出た。