『liar』
「マキちゃんかぁ…
可愛いね」
そう言いながら、男は、ユキの太股の辺りを触り始める。
驚きと怖さから、身体に力が入る。
「大丈夫。
何も怖い事なんかないよ」
笑顔の男は、手を止める事もなく、そう言った。
『サオリ、早く来て…』
ユキの願いも虚しく、サオリの姿は見えない。
平日の夕方。
公園の中でも遊具がある所からは、だいぶ離れた場所に、そのベンチは置いてある。
しかも……
周りは林。
助けてくれる人など居るハズもなく、大声でも出さなければ、通る人さえ知らないフリ。