『liar』
三人の時間を取り戻せた事で、ユキは体も心も、快復して行った。

そして、ユキは俊弥の事を思い出す。

周りの大人達の中で、唯一、優しくしてくれたのは俊弥だけである。

もちろん現実には、俊弥にとってのユキは、歪んだ性癖を満たす為の道具である。

そんな事を知る由もないユキには、優しい大人だった。


もう、行かなくて良い。


それは、俊弥がユキにする行為が嫌だった訳ではなく、孤独を埋める為には、ユキにとっても必要な存在になっていた俊弥の所には、もう、行く必要がなくなった。


色んな事を諦めて、自分の心に“嘘”をついて生きて来たユキが、明るい未来を夢みて歩き出そうとした瞬間だった。





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