『liar』

小学校を卒業する事は、ユキにとって辛い記憶との決別を意味していた。


そして、他の子供達と同じ様に、舞い上がる桜の花びらの中、期待を膨らませて、中学校へと入学する。



ーーーーハズだった。


勉が家を出て行ってからも、月に何度か、幸子は外泊をしていた。


あの男。

勉を殴った“稔”との付き合いを、幸子は続けていたのである。


最初のうちこそ、朝には帰って来ていた幸子も、回数を重ねるうちに、二日程帰らない事が当たり前になっていた。


“捨てられてしまわない様に……”

ユキは、幸子の行動に、口を出す事は出来なかった。





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