『liar』

学校で使う物と、段ボール一箱分の荷物だけを持って、ユキは一人で義勝の住むアパートへと引っ越した。


ーーーーー5年ぶり。


義勝の顔も忘れかけていたユキは、緊張しながらドアを叩いた。


「ユキか?
大きくなって……」


義勝は、久しぶりに会った成長した娘に、戸惑いを感じながらも、喜びをあらわにした。


「こ、こんにちは……」

正直、ユキには目の前にいる“男”が父親なのかどうか、分からなかった。

それ程に、義勝と暮らした時間が短過ぎて、ユキの記憶に残って居なかったのである。





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