『liar』
間もなく、明美は自宅にも顔を出す様になった。

義勝が居なくても、ユキの食事を作り、時には洋服を買って持って来た。


他人に用意される食事を、食べない訳にも行かず、ユキは家に帰る様になる。

明美が来られない日には、明美の店に行き、カウンターの隅で食事をして帰る。


それが、ユキの生活パターンとなり、最初は疎ましく感じていた明美に、ユキは少しづつ心を開いて行くのである。



その日も、いつもの様に“スナック扉”で、ユキは夕飯を食べていた。


いつもは明美と二人きりの空間に、体格の良い、50歳を過ぎているだろう男が、既に酔っている様子でカウンターに座っていた。





< 85 / 103 >

この作品をシェア

pagetop