『liar』
無言のまま、明美が用意した食事を食べているユキを、男は見ていた。

視線を感じながらも、ユキはそのまま食べ続ける。


「ママ、ちょっと…」

男が明美を呼び寄せ、小声で何かを耳打ちした。


明美は、男との話を終えると、ちょうど最後の一口を食べ終えたユキの隣りに座った。


「ねぇ、ユキちゃん。
今日これから、オジさんとドライブに付き合ってあげてくれないかなぁ?」


ユキは、明美越しに男の方を見た。

右手をあげて、ニヤけている顔が、さっきよりも不気味に見えた。





< 86 / 103 >

この作品をシェア

pagetop