『liar』
「名前は?」

明らかに酔っている男は、酒の匂いを充満させて、ユキに話しかけてくる。


「……ユキ…」

少しでも男から離れようと、ユキはドアのギリギリまで体をずらす。

そんなユキの様子を見ながら、左手でユキの肩に手を回し、簡単に男の方に体を引き寄せられてしまう。

「オジさんと、少し、お話をしよう…」


男はトントンとユキの肩を軽く叩きながら、右手はユキの太股の上に置く。


硬直したユキを余所に、二人を乗せたタクシーは、怪しげなネオンが輝く建物の前に到着した。


男は支払いを済ませ、降りる様にユキを促し、二人はその怪しげな建物の前に立った。





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