『liar』
「じゃあ、行こうか」

酔っているとはいえ、体格の良い大人の男の力の前には、ユキは非力である。

「イヤーーーっ」

しっかりと握られた右手を払い除けようと、ユキは必死で抵抗していた。


「こんな所で騒いでると、恥ずかしいのは君だよ?」


暴れるユキを、更に強い力で掴み、険しい顔をして男がユキに言う。


ユキは、絶対に泣かないと決めていた。


明美が自分を売る様な真似をした事は、分かっている。


でも、泣かない。


大人なんて、そんなモノだと、ずっと前から知ってるから。





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