『liar』
抵抗するユキと、ホテルの中に連れ込もうとする男の姿に、通りの外れにある場所にも関わらず、何人かの野次馬が集まって来た。

ザワつく回りの雰囲気に、男のユキを掴んだ手が、一瞬緩む。


ユキは、その一瞬を見逃さず、思い切り男の手を払い、全力で野次馬達が居る方へと走った。


末の悪そうな男は、逃げる様にホテルの中へと入って行く。


ユキは、走る。


『まだ、泣かない…』


今は、走るしかなかった。


男から逃げる為だけじゃなく、ユキを取り巻く環境の全て。


そこから、逃げる様に………





< 90 / 103 >

この作品をシェア

pagetop