『liar』
ある時、保恵の部屋でユキと眞司は二人きりになった。


「お前さぁ、ずっとココに居んの?」

「えっ?
…はい。ココに居る事が多いです……」


ちゃんと言葉を交わすのは、初めてに等しい。

ユキも、少し緊張を含んだ様子で返事をした。


「ココさぁ、長く居る訳にもいかないだろ?
お前、行くトコないの?」

「………」


ユキは返事に困った。

確かに、自分でも邪魔な事は感じている。

でも、義勝の所には帰りたくないと思うと、つい、この部屋に来てしまう。


保恵の優しい顔が見たくて、甘えてしまうのだ。





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