また、君に恋をする
誰も知らない
全身の痛みで目が覚めた。

見覚えのない天井。

誰かが嬉しそうに声をあげる。


「由紀?気付いた?」


中年の少し太った女性が顔を覗き込んでいる。

涙目で喜ぶその顔を、私は知らない…。


「…誰?」


誰なの?

あなたは何で私を見てるの?

ここはどこ?

何でこんなに体が痛むの?

そして…私は誰なの?

全てが分からない…

中年の女性は青ざめた顔をして、何度も何度も確認してくるけど、何度聞かれても思い出せない。

頭の中に重くて深い霧がかかったようですっきりしない。

パタパタと看護師が駆け寄って来る。

私の顔を確認すると


「見えますか?」


と手をヒラヒラさせた。


「…はい」


答えると、ニッコリ笑う。

後からやって来た若い医者に向かって


「視覚、聴覚は戻っているようです…」


と小声で話を始めた。

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