また、君に恋をする
いたたまれない気持ちになり、由紀は部屋を飛び出した。

階段を駆け降りようとした時、足がもつれ、そのまま転げ落ちそうになった。

その瞬間、事故の瞬間の記憶が写真の様にパッパッと浮かび上がった。

青いトラック。

転がるボール。

追い掛ける男の子。

助けようと駆け出す。

激しいクラクションの音と衝撃。


「お兄ちゃん…」


意識を失う直前に呟いた言葉。

ハッと我に返ると、由紀は勇人の腕の中にいた。


「大丈夫か?」


心配そうに顔を覗き込む勇人に、由紀は無意識に呟いていた。


「お兄ちゃん…」


勇人は思わず由紀を強く抱きしめていた。

勇人の腕の中で由紀は不思議と穏やかな気持ちになる自分を感じた。
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