また、君に恋をする
小さな小物が並ぶ店内。

部屋にある小物と同じ物も何点か見付けた。


「あら、由紀ちゃん!」


店員が嬉しそうに声を上げた。

いつもならここですかさず母親がコソコソと店員に耳打ちし、必ず気まずい空気が流れる。

みんなが腫れ物にでも触るように接して来る。

それが嫌で堪らなかった。


「体はもう平気なの?
ビックリしたわよ、事故に遭ったって聞いて。
でも元気そうじゃない、良かったわー」


嬉しそうにそう言われ、素直に嬉しかった。

勇人も母親の様に説明するのではと不安があったが、勇人は何も言わず、ただ優しい目で見ているだけだった。

知らない店員。

だけど前の私を知っている人。

噛み合わない会話を気にしていたが、会話は思っていたより簡単で、温かかった。


「また来てね」


何も買わずに店を出る由紀に、店員はそう言い手を振ってくれた。
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