また、君に恋をする
「あの…ありがとうございました…」


店を出ると由紀は勇人にそう言った。

勇人は不思議そうな顔をしている。


「お店で、記憶の事言わないでくれたから」


すると勇人はふっと笑った。


「由紀が嫌がる事は分かるから」


その言葉に由紀は嬉しいような恥ずかしいような気持ちになった。


「あの…前の私って、どんな子でしたか?」


由紀はずっと聞きたかった事を尋ねてみた。


「…明るくて、いつも俺の後をついて来てたよ。
子犬みたいだって言ったら真っ赤になって怒ってたな。」


勇人が楽しそうに話しているのを黙って聞いていた。


「暗闇が苦手で、停電になった日は一人じゃ眠れなくて、ずっと俺にくっついてた。

泣き虫で甘えん坊で、その癖意地っ張りで変に我慢して…

留学してからは毎日心配で、すぐにでも帰って来たかった…」


恋しい人を見つめる目で由紀を見ると、悲しそうに笑った。

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