また、君に恋をする
和美は、お大事にと告げると帰って行った。


「…敵わないな…」


勇人の動揺した様子を思い出し、寂しそうにそう呟いた。

和美は二人に血の繋がりがないことを知っていた。

勇人の留学が決まった時、たまたま担任の机にあった書類を盗み見たのだ。

戸籍の欄に養子と書かれた由紀の名前を見て、言葉を失った。

前々からおかしいと感じていた二人の仲の良さ。

特に勇人の由紀への態度は、兄の態度ではない様に感じていた。

だけどどうしても認めたくなくて、気付かないふりをしていた。


「…あれじゃ丸分かりだよ…」


フッと小さく笑い、涙が出そうになった。

さっきの勇人の態度ではっきりと分かった。

勇人は由紀が好きなのだという事。

それも生半可な思いではない。

愛してると言っていい位に…

そして由紀もきっと勇人を好きなのだろう。

和美の入り込む隙間など微塵もなかった。
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