また、君に恋をする

兄の帰国

私が目を覚まして一週間が過ぎた頃、兄がフランスから帰ってきた。

走ってきたのか、病室に来た時には汗だくで、息も上がっていた。


「由紀…」


私の顔を見るなりギュッと抱きしめる。

愛おしそうに回された腕の力に私は戸惑った。


「…あの…痛いです」


私の言葉に慌てて手を離すと、照れた様に笑った。

写真で教えられていなければ、きっと兄なのだとは分からなかっただろう。


「お兄さん、ですよね?」


私の言葉に、兄は不思議そうな顔をした。


「すみません…私、記憶がないんです…」


そう言うと、愕然とした顔で私を見た。


「俺の事も覚えてないのか?」


悲しみを含んだ言葉に胸が痛む。


「ごめんなさい…」


「…そうか…でも、それで良かったのかもな…」


兄は悲しそうに呟いた。
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