また、君に恋をする
「ここが由紀の部屋よ」


二階の一番奥のドアを開けると、甘い匂いがする部屋に通された。


「…ここが、私の部屋…」


見渡しても何も思い出せない。

木製の棚にズラリと並んだガラス細工の小物。

ピンクの小さな丸テーブル。

白いベッドに勉強机。

壁のコルクボードにはたくさんの写真が貼られている。

ベッドの上の小さな棚には兄と笑う私の写真。

鼻をくすぐる甘い匂いはラズベリーとバニラのお香。


この中で私は生きていたのか…


「あれはね、由紀ちゃんが好きで集めてたのよ」


色んな物を指差しながら母親が細かく教えてくれた。

私は、ガラス細工の小物とお香が好きな女の子だったらしい。

兄とも仲良しで、留学すると聞いた時には家を飛び出す程ショックを受けていたのだそうだ。

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